福岡地方裁判所 昭和５５年（わ）４３５号 判決 1981年4月09日
主文
被告人を懲役四年に処する。
未決勾留日数中一六〇日を右刑に算入する。
理由
（罪となるべき事実）
被告人は、
第一、北九州市小倉北区浅野二丁目一四番一号所在の興亜火災海上保険株式会社九州支店（支店長大谷吉雄）小倉支社の支社長として保険契約の募集、同支社の預金の預け入れ及び解約ならびに通知預金の解約手続など同支社の業務全般を統轄していたものであるが、別表のとおり、昭和五四年二月六日ころから同年一二月二八日ころまでの間、前後二一回にわたり、同区堺町一丁目一番一〇号山口銀行北九州支店ほか八か所において、右小倉支社長名義の普通預金口座などから払戻しを受けるなどして現金合計一億六三〇三万七九五一円及び小切手額面合計二五〇〇万円を同支社のため業務上預り保管中、いずれもこれを自己の用途に充てる目的で着服もしくは費消して横領し
第二、自己の借金返済に窮したあげく壺山宗慶から金銭を騙取しようと企て、昭和五四年一一月二一日ころ、同区紺屋町一二番二一号勝山ビル一階喫茶店「べにはな」において、同人に対し、入手後は直ちに自己の債務の返済に充てるつもりで同支社名義で銀行に通知預金を設定する事実はなく、約束通り返済する意思も能力もないのにあるように装い、「お客を紹介してもらうために、銀行に二〇〇〇万円の通知預金をしてやらねばならない。多い方がいいので、よかつたら四〇〇〇万円都合できませんか。担保には会社の通知預金証書を差し入れますから。一か月以内に返済します。」などとうそを言つてその旨同人を誤信させ、よつて翌二二日ころ、同区浅野二丁目一四番一号ＫＭＭビル前路上において、同人から現金一五〇〇万円の交付を受けてこれを騙取し
たものである。
（証拠の標目）（省略）
（法令の適用）
一、判示第一の各所為 いずれも刑法二五三条
判示第二の所為 刑法二四六条一項
二、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条
判示第一の別表11の罪の刑に加重
三、刑法二一条
四、刑事訴訟法一八一条一項但書
よつて主文のとおり判決する。
別表
番号 横領年月日 （昭和年月日ころ） 横領場所 横領金額 犯行手段方法
１ 54・２・６ 北九州市小倉北区堺町一丁目一番一〇号 山口銀行北九州支店 二、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の興亜火災海上保険株式会社九州支店（以下九州支店という）小倉支社長（以下支社長という）名義の普通預金口座から払戻しを受けて着服
２ 54・３・９ 右同 五、〇〇〇、〇〇〇円 右同
３ 54・３・23 右同 一、〇〇〇、〇〇〇円 右同
４ 54・３・30 右同 二、〇〇〇、〇〇〇円 右口座から三〇〇万円の払戻しを受け、その内二〇〇万円を着服
５ 54・４・７ 行橋市大字大橋五四二番地 福岡銀行行橋支店 三、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金一、五〇〇万円を解約して、その内三〇〇万円を着服
６ 54・４・７ 大分県中津市大字島田二〇五番地の一〇 中津信用金庫中津駅前支店 一、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金を解約して着服
７ 54・４・13 前記山口銀行北九州支店 五、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の普通預金口座から払戻しを受けて着服
８ 54・４・14 前記中津信用金庫中津駅前支店 一〇、〇〇一、八九七円 上記支店の支社長名義の一、〇〇〇万円の通知預金を解約し、その元利金を上記支店の自己の普通預金口座に振込み入金して着服
９ 54・６・22 前記山口銀行北九州支店 一〇、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の普通預金口座から払戻しを受けて着服
10 54・８・20 右同 一〇、〇〇〇、〇〇〇円 右同
11 54・８・30 右同 二五、〇〇〇、〇〇〇円 右同
12 54・９・14 北九州市門司区高田一丁目一番二〇号 福岡銀行門司駅前支店 額面 五、〇〇〇、〇〇〇円 の小切手 上記支店の支社長名義の通知預金一、〇〇〇万円を解約し、その内五〇〇万円を同支店長振出名義の小切手で受け取り着服
13 54・10・５ 前記山口銀行北九州支店 額面 二〇、〇〇〇、〇〇〇円 の小切手 上記支店の支社長名義の普通預金口座から同支店長振出名義の小切手で払戻しを受け着服
14 54・10・19 行橋市大字宮市四四四番地の七 正金相互銀行行橋支店 五、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金を解約して着服
15 54・10・19 北九州市小倉北区昭和町一三番一四号 福岡相互銀行三萩野支店 五、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金を解約して着服
16 54・11・２ 前記中津信用金庫中津駅前支店 二〇、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の別段預金の払戻しを受けて自己の債務の弁済として福岡相互銀行門司支店の西部商事株式会社の当座預金口座に振込み入金して費消
17 54・12・７ 前記正金相互銀行行橋支店 五、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金を解約して着服
18 54・12・７ 前記中津信用金庫中津駅前支店 一五、〇〇〇、〇〇〇円 福岡相互銀行日明支店の支社長名義の通知預金一、〇〇〇万円及び西日本相互銀行城野支店の支社長名義の通知預金五〇〇万円を解約して上記支店の自己の普通預金口座に振込み入金して着服
19 54・12・14 北九州市小倉北区米町一丁目一番二一号 大分銀行小倉支店 一五、〇〇五、九七二円 福岡銀行徳力支店の支社長名義の通知預金一、五〇〇万円を解約して、その元利金を上記支店の自己の普通預金口座に振込み入金して着服
20 54・12・28 京都郡苅田町京町一丁目一二番地一三号 福岡銀行苅田支店 一五、〇〇〇、〇〇〇円 上記支店の支社長名義の通知預金一、五〇〇万円を解約して福岡銀行行橋支店の自己の普通預金口座に振込み入金して着服
21 54・12・１ 北九州市小倉北区昭和町一三番一三号 西日本相互銀行三萩野支店 九、〇三〇、〇八二円 上記支店の支社長名義の定期預金を解約し、その元利金を自己の用途に費消する目的で着服